【店舗の無断転貸は違法?】仕組み・リスク・合法化の手順
「営業時間外の空き時間を有効活用したい」 「知人に店舗スペースを少しだけ貸したい」
店舗を借りている方(テナント)の中には、このように考える方も多いでしょう。 しかし、ここで絶対に注意しなければならないのが「無断転貸(むだんてんたい)」です。
「少し貸すだけならバレないだろう」「家賃さえ払っていれば文句はないはず」という安易な判断は禁物です。無断転貸は不動産賃貸において契約解除に直結する重大な違反行為であり、発覚すれば多額の損害賠償を請求されるリスクもあります。
この記事では、店舗転貸の法的な仕組みから、無断転貸の判断基準、リスク、そして合法的に転貸を行うための正しい手順までをわかりやすく解説します。
目次
店舗転貸(また貸し)とは?基本の仕組み
まず前提として、「転貸(てんたい)」とはどのような状態を指すのかを確認しましょう。
転貸借(サブリース)の構造
転貸とは、店舗を借りている人(賃借人)が、その物件をさらに第三者(転借人)に貸し出すこと。いわゆる「また貸し」です。
【民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)】
1.賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2.賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
このように、法律(民法)において「オーナー(賃貸人)の承諾なき転貸」は禁止されており、これに違反した状態が「無断転貸」となります。
どこからが「無断転貸」?判断の境界線
「全部貸すわけじゃないから大丈夫」は大間違いです。 法的には、以下の要素がある場合、無断転貸とみなされる可能性が極めて高くなります。
🚫 無断転貸(アウト)になる主なケース
① 名義と実態の不一致
- 契約者は「自分」だが、実際に営業して利益を得ているのは「知人」や「別の会社」。
- 「名義貸し」もこれに該当します。
② グループ会社への使用
- 「親会社」名義で契約し、許可なく「子会社」に営業させている。
- 法人格(会社)が別であれば、たとえグループ内であっても第三者への転貸とみなされます。
③ 飲食店の間借り(シェアキッチン)
- 営業時間外(ランチタイムや深夜)だけ別の店に貸す。
- これも立派な転貸借です。近年増えているトラブルの一つです。
④ 店舗の一部のみを貸す
- 「倉庫の一角だけ」「棚の1つだけ」であっても、特定のスペースを特定の第三者に独占的に使わせ、対価を得ていれば転貸のリスクがあります。
⚠ 「業務委託」ならセーフ?
よくある抜け道として、「転貸ではなく、運営を業務委託しているだけ」と主張するケースがあります。しかし、実態が以下のようであれば転貸と判断されます。
- 誰が主導権を握っているか? → 受託者(使う人)が自由に経営している
- お金の流れは? → 固定の委託料(実質家賃)を払っている
契約書の名称が「業務委託契約」であっても、実態が「場所貸し」であれば、契約違反を問われます。
無断転貸が発覚した時の「4つの重大リスク」
オーナーに無断転貸が発覚した場合、単に「やめればいい」では済みません。 過去の判例でも、無断転貸は「賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊する背信行為」とされ、厳しい措置が認められています。
❌ リスク1:即時の契約解除(強制退去)
オーナーは催告(「直してください」という警告)なしに、直ちに契約を解除できる権利を持ちます。明日から店が営業できなくなる恐れがあります。
❌ リスク2:立ち退き料は一切もらえない
通常、オーナー都合の退去には立ち退き料が発生しますが、契約違反(無断転貸)による解除の場合、立ち退き料は1円も支払われません。 さらに、高額な違約金や即時の原状回復義務が発生します。
❌ リスク3:損害賠償請求
転貸先が起こしたトラブルの責任は、すべて「契約者(あなた)」が負います。
- 転借人がボヤ騒ぎを起こした
- 近隣から騒音クレームが来た
- 勝手な内装工事で建物を傷つけた これら全てに対し、多額の賠償金を支払う義務が生じます。
❌ リスク4:社会的信用の失墜
不動産業界や保証会社の間で「重大な契約違反履歴」として情報が残る可能性があります。 最悪の場合、次の店舗物件を借りようとしても審査に通らなくなるリスクがあります。
「バレない」は誤解!よくある発覚パターン
「オーナーはあまり店に来ないから大丈夫」と思っていても、以下のようなきっかけで発覚します。
- 近隣店舗や客からの通報(「最近、店主が変わった?」「知らない人が出入りしている」)
- 消防・保健所の検査(営業許可証の名義違い)
- ウェブサイトやSNS(「〇〇店、オープンしました!」という転借人の投稿)
- 家賃の振込名義(うっかり転借人の名義で振り込んでしまう)
合法的に店舗転貸を行うための4ステップ
転貸自体は「悪」ではありません。「無断」で行うことが問題なのです。 手順を正しく踏めば、合法的に転貸(サブリース)することは可能です。
✅ ステップ1:契約書の確認
まずは現在の賃貸借契約書を確認しましょう。 多くの契約書には「第○条(譲渡及び転貸の禁止)」という条項があり、「書面による承諾がない限り禁止する」と書かれています。
✅ ステップ2:オーナーへの事前相談と承諾
必ず「書面」でオーナーの承諾を得てください。 「口頭でいいよと言われた」は証拠にならず、後でオーナーが変わった際などにトラブルになります。「転貸承諾書」を取り交わすのが一般的です。
✅ ステップ3:転貸条件の明確化(承諾料の支払い)
オーナーが転貸を認める条件として、以下を求められることがあります。
- 名義変更料(承諾料): 家賃の1ヶ月分程度など
- 賃料の増額: 転貸によってリスクが増えるため
✅ ステップ4:転貸借契約の締結
あなたと転借人(実際に使う人)の間で、正式な契約を結びます。
- 契約期間(本契約より短く設定する)
- 使用目的の制限
- 原状回復義務の所在 などを明確にします。
まとめ:転貸は必ず「オーナーの承諾」を得てから
店舗の無断転貸は、軽い気持ちで行ったとしても、「契約解除」「損害賠償」「信用の喪失」という取り返しのつかない事態を招きます。
- 許可なく第三者に使わせることは違法(契約違反)。
- グループ会社や知人であっても、名義が違えば転貸になる。
- 合法化するためには、必ずオーナーの「書面承諾」が必要。
「空きスペースを有効活用したい」と考えたら、こっそり進めるのではなく、まずは管理会社やオーナーに正直に相談することが大切です!
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